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第83回オスカー・アカデミー賞が決まるまで
OSCARサイト ノミネーション・受賞リスト
■2011年02月28日
●アカデミー賞決定
結果は、意外とマトモだった。『ソーシャル・ネットワーク』に対しては、非常に批判的だったので、一般の予想のような結果にならなかったので安心した。周囲であまりに「好評」(受賞作として)だったので、「最終予想」では予想を替えたが、それはただの迷いにすぎなかったようだ。もし『ソーシャル・ネットワーク』が作品賞以下総なめだったら選考の基準を疑わなければならないと思っていた。ある程度「合理的予想」も通用することがわかり、安心した。
合理的予想 2/12
日和見的予想 2/26
最終決定 2/28
作品賞
英国王のスピーチ
迷い→ソーシャル・ネットワーク→☓
主演男優賞
コリン・ファース
迷いなし→○
コリン・ファース
主演女優賞
ナタリー・ポートマン
迷いなし→○
ナタリー・ポートマン
助演男優賞
クリスチャン・ベール
迷いなし→○
クリスチャン・ベール
助演女優賞
メリッサ・レオ
迷いなし→○
メリッサ・レオ
監督賞
デヴィッド・O・ラッセル
迷い→デイヴィッド・フィンチャー→☓
トム・フーパー
脚色賞
Winter's Bone
迷い→ソーシャル・ネットワーク→○
ソーシャル・ネットワーク
オリジナル脚本賞
英国王のスピーチ
迷い→インセプション →☓
英国王のスピーチ
アニメーション賞
ヒックとドラゴン
迷い→トイ・ストーリー3 →○
トイ・ストーリー3
美術賞
アリス・イン・ワンダーランド
迷いなし→○
アリス・イン・ワンダーランド
撮影賞
トゥルー・グリット
迷いなし→☓
インセプション
編集賞
127 Hours
迷いなし→☓
ソーシャル・ネットワーク
メイクアップ賞
Barney's Version
迷いなし→☓
ウルフマン
視覚効果賞
インセプション
迷いなし→○
インセプション
作曲賞
英国王のスピーチ
迷いなし→☓
ソーシャル・ネットワーク
歌曲賞
トイ・ストーリー3
迷いなし→○
トイ・ストーリー3
音響編集賞
インセプション
録音賞
インセプション
■2011年02月26日
●最終予想
予想を始めてしまったので、最終の予想を書いておきたい。この間、候補作品を見なおしたり、データを読んだりして、思いつくこともいろいろあった。2月10日に立てた予想とは少し違う考えが生まれた。
◆作品賞:『ソーシャル・ネットワーク』
過去の例をながめてみると、スペクタクルなもの、娯楽性の高いものよりも、ある種の「社会性」と「時代性」のあるものへの関心が高いような気がした。その点を考慮すると、わたしの好み・評価とは真逆だが、とりあえずいまの時代を象徴するSNSを主題にしている点ではこの作品が最有力だと言わざるをえない。他の可能性は、レズファミリーを描いた『キッズ・オールライト』である。これも、「いま」の時代を描いている。最初有力候補に挙げた『英国王のスピーチ』と『ブラック・スワン』は、映画としての密度は高いが、「いま」のドラマではない。、『ザ・ファイター』と『Winter's Bone』にはすぐれた「いま」性があるのだが、SNSにくらべれば、「時代性」は弱い。『インセプション』、『127時間s』、『トイ・ストーリー3』、『トゥルー・グリット』も同様だ。
◆主演男優賞:コリン・ファース(『英国王のスピーチ』)
この賞に関しては、功労がかなり重視される。とすると、ジェフ・ブリッジズ(『トゥルー・グリット』)は去年その功労がねぎらわれたから、今年の候補のなかでは、コリン・ファースしかいない。
◆主演女優賞:ナタリー・ポートマン(『ブラック・スワン』)
これも、主演男優賞と同じ理由からだ。ただ、その意味では、『Rabbit Hole』のニコール・キッドマンも十分な功績があるが、ここでまた考慮される「時代性」の点で、はずれてしまう。その意味では、ダークホースは、ミシェル・ウィリアムズ(『ブルーバレンタイン』)である。マイナーな作品ではあるが、彼女の演技はすばらしかった。アネット・ベニング(『キッズ・オールライト』)は、演技はよかったが、わたしには、「主演」とは思えなかった。ジェニファー・ローレンス(『Winter's Bone』)にあげてしまったら、功労という係数が無視されることになる。
◆助演男優賞:クリスチャン・ベール(『ザ・ファイター』)
功労ということを考えても、実力を見ても、ほかと比較して群を抜いている。ほかにいないという点で、ベールとなるだろう。
◆助演女優賞:メリッサ・レオ(『ザ・ファイター』)
接戦的様相が見られるが、消去法で行くと、「合理的予想」で書いた理由で、ここに落ちる。
◆監督賞:デイヴィッド・フィンチャー(『ソーシャル・ネットワーク』)
こちらは、昨年のキャスリン・ビグロー(『ハート・ロッカー』)のように、「社会性」や「時代性」が重視されるとすれば、こういう選択になる。わたしとしては、デヴィッド・O・ラッセル(『ザ・ファイター』)を推したいが、その可能性はなさそうである。他については、「合理的予想」の通り。
◆脚色賞:『ソーシャル・ネットワーク』
これも「社会性」や「時代性」が重視されるようなので、だとするとこういうことになる。『Winter's Bone』はとてもいいが、支持は強くない。『トゥルー・グリット』と『トイ・ストーリー3』の脚色度は、同レベルだろう。
◆オリジナル脚本賞:『インセプション』
これも「社会性」への意識が加味されるようなので、その点では、この選択になる。クリストファー・ノーランとしてはむしろ後退だとわたしは思うが、一応オリジナリティという点でも申し分ない。「社会性」という点では、わたしは『ザ・ファイター』、その次に『キッズ・オールライト』を取るが、マイナーなあつかいをうけるだろう。『英国王のスピーチ』は、完成度が高いが、「社会性」と「時代性」の点では、『インセプション』に一歩譲る。『Another Year』は、見ていないが、UKの映画であることを考え、はずす。ちなみに、『英国王のスピーチ』は、英・米・オーストラリアの合作である。
◆アニメーション賞:『トイ・ストーリー3』
「合理的予想」では『ヒックとドラゴン』を挙げたが、レヴューでも書いたように、『トイ・ストーリー3』の映画としての質は非常に高い。
以上のほかの賞は、「合理的予想」と「音楽部門の予想」で書いた通りである。
■2011年02月17日
●音楽部門の予想
音楽は YouTube などでかなりチェックできるので、あとまわしにしておいた。遅ればせながら、わたしの予想を書いてみる。
●作曲賞(Original Score) →『英国王のスピーチ』(アレクサンドル・デスプラ)
●歌曲賞(Original Song) →『トイ・ストーリー3』(ランディ・ニューマン)
「作曲賞」にノミネートされているのは、『127 Hours』、『ヒックとドラゴン』、『インセプション』、『英国王のスピーチ』、『ソーシャル・ネットワーク』であるが、『127 Hours』は、悲惨なようで滑稽なアキシデントの感じに合ったDido & A. R. Rahmanの「If I Rise」などが印象に残る。『ヒックとドラゴン』には、Icarus Witchの曲などいいものがあったが、全体としては「まとも」な印象を受けた。『インセプション』は、ハンス・ズィマーの「コケオドシ」がぴったりの感じ。『ソーシャル・ネットワーク』は、ストーリーの時代背景との関連ではクラブミュージック的なおしゃれな感じがいいのだが、もしSNSというものが時代を画す出来事だとするのなら(フィンチャーはどうも、そうは思っていないらしい)、もっと凄い音楽でなければならない。というわけで、素朴なようでいて、微妙に多彩な要素を含む Alexandre Desplatの『英国王のスピーチ』を取りたい。
「歌曲賞」のノミネートされている『127 Hours』、『Country Strong』、『Tangled』、『トイ・ストーリー3』のなかで、『Country Strong』の「Coming Home」はラブリーだが、『Tangled』のAlan Menken「I See the Light」、『127 Hours』の「If I Rise」には、わたしはオリジナリティを感じなかった。その点、『トイ・ストーリー3』の音楽は多彩であり、「You've Got a Friend in Me」、「So Lon」、「We Belong Together」など、快感と感動が残る音楽に溢れている。ランディ・ニューマンで決まりだ。
■2011年02月12日
●アカデミー賞の風聞的予想
作品で示された実力から判断するとこうならざるをえないという「合理的」な予想を書いたばかりだが、英語圏の風評はどうなのだろうか?
ブロガーや批評家のサイトを流し見すると、助演男優賞→クリスチャン・ベールに関しては誰も異論がない。また、主演男優賞→コリン・ファース、主演女優賞→ナタリー・ポートマンもほぼ全員一致の感じだ。
わたしと大分違うのは、『ソーシャル・ネットワーク』の評価である。わたしはこの作品を評価できないが、大ヒットによる興業収益の大きさ、監督デイヴィッド・フィンチャーのこれまでの実績、ネット社会をあつかったトピック性などからすると、わたしの意固地な態度は、賞の実際的な予想には障害になることは十分わかっている。
助演女優賞に関して、『トゥルー・グリット』のヘイリー・スタインフェルドを挙げる人が多い。が、これに関しては、わたしの意固地からではなく、論理的にちがうのではないかと思うのだ。映画初出演に近いこの俳優はたしかにいい仕事をしたし、逸材だと思う。が、アカデミー賞は「新人賞」とは違うわけで、彼女がもらうのなら、この賞の選別方式が変わったとしか思えない。
以下は、風評(赤字)を加えたリストである。
●作品賞→『英国王のスピーチ』→『ソーシャル・ネットワーク』
●主演男優賞→コリン・ファース(『英国王のスピーチ』)
●助演男優賞→クリスチャン・ベール(『ザ・ファイター』)
●主演女優賞→ナタリー・ポートマン(『ブラック・スワン)』
●助演女優賞→メリッサ・レオ(『ザ・ファイター』)→ヘイリー・スタインフェルド(『トゥルー・グリット』)
●アニメーション賞→『ヒックとドラゴン』→『トイ・ストーリー3』
●美術賞→『アリス・イン・ワンダーランド』→『英国王のスピーチ』
●撮影賞→『トゥルー・グリット』(ロジャー・ディーキンス)
●監督賞→デヴィッド・O・ラッセル(『ザ・ファイター』)→デイヴィッド・フィンチャー(『ソーシャル・ネットワーク』)
●編集賞→『127 Hours』(Jon Harris)→『英国王のスピーチ』
●メイクアップ賞→『Barney's Version』→『ウルフマン』
●視覚効果賞→『インセプション』
●脚色賞→『Winter's Bone』
●オリジナル脚本賞→『英国王のスピーチ』(デイヴィッド・サイドラー)
■2011年02月10日
●アカデミー賞の「合理的」予想
今月末に第83回アカデミー賞が決まる。お祭りだから、必ずしも実質とはちがう。希望的観測がどうしえも入るが、なるべく「合理的」な予測をしてみよう。実際の選抜には、いろいろな事情や係数が入って来るから、当たるも八卦、当たらぬも八卦だ。思いついたことがあったら、ヴァージョンを重ねていく。当面は以下の通り。ドキュメンタリーや外国映画など、見ていないものに関しては書いていない。
●作品賞→『英国王のスピーチ』
上位で賞を争うのは、『ザ・ファイター』、『ブラック・スワン』、『英国王のスピーチ』であり、『インセプション』、『127 Hours』、『トイ・ストーリー3』、『トゥルー・グリット』、『ソーシャル・ネットワーク』、『Winter's Bone』ははずれるだろう。アカデミー賞は、時代の空気を反映するから、ネットの本質をとらえそこなっているとしても、『ソーシャル・ネットワーク』という線は依然有力だが、そうなったら残念である。『ザ・ファイター』と『ブラック・スワン』のリアリティは、いまという時代と直接拮抗するわけではない。とすると、無難な線で『英国王のスピーチ』になる確立が高い。来年在位60周年をむかえる英国王室への挨拶もある。
●主演男優賞→コリン・ファース(『英国王のスピーチ』)
よほどのことがないかぎり、昨年に続いて2度ということはないから、ジェフ・ブリッジズ(『トゥルー・グリット』)ははずす。演技のレベルでなら、ハビエル・バルデム(『ビューティフル』)もジェームズ・フランコ(『127 Hours』)も悪くはないが、コリン・ファース(『英国王のスピーチ』)のほうが一般受けがする。ジェシー・アイゼンバーグ(『ソーシャル・ネットワーク』)は、うまいというよりキャラクターが彼に合っているだけ。ジェイムズ・フランコは、特に熱演というわけではない。
●助演男優賞→クリスチャン・ベール(『ザ・ファイター』)
エキセントリシティの演技ではジェレミー・レナー(『ザ・タウン』)が目を惹く。ジェフリー・ラッシュ(『英国王のスピーチ』)は手堅いが、今回突出しているわけではない(功績が加算されることはあるが)。マーク・ラファロ(『キッズ・オールライト』)も、同様。ジョン・ホークス(『Winter's Bone』)の演技の質は高いが、これはというほどではない。その点、クリスチャン・ベールは、彼の長い俳優歴のなかでも新しく感じられる役柄を創造した。もし彼が選ばれなければ、アカデミーの選考はでたらめである。
●主演女優賞→ナタリー・ポートマン(『ブラック・スワン』)
「主演」ということでは、候補のなかでナタリー・ポートマンしか主役を演じてはいない。屈折した微妙な演技としてはアネット・ベニング(『キッズ・オールライト』)は高く評価できる。ミシェル・ウィリアムズ(『ブルーバレンタイン』)は、ほぼ同格。ジェニファー・ローレンス(『Winter's Bone』)は、大器を感じさせる主演だが、賞には早過ぎる。『Rabbit Hole』のニコール・キッドマンは、これまでと大分違ういい演技を見せるが、主演女優賞には地味すぎる。
●助演女優賞→メリッサ・レオ(『ザ・ファイター』)
エイミー・アダムス(『ザ・ファイター』)とヘレナ・ボナム・カーター(『英国王のスピーチ』)は似た位置にある。が、ともに優れた脚本・演出のもとで一流の俳優がこのぐらいの演技をしなければ、手抜きになるだろう。その点、独善的な母親役をユニークに演じたメリッサ・レオは有利である。ヘイリー・スタインフェルド(『トゥルー・グリット』は、事実上の主役なのだから、それを「助演」あつかいにしないほうがいい。いずれ主演女優賞を取るだろう。ジャッキー・ウィヴァー(『Animal Kingdom』)は、警察に狙われる強烈なファミリーの母親を圧倒的なリアリティで演じたが、「助演」にしては出場が少ないのでは? 演技の質としては凄い。
●アニメーション賞→『ヒックとドラゴン』
『イリュージョニスト』は、ショメの前作『ベルヴィル・ランデブー』にくらべると見劣りがする。『トイ・ストーリー3』はいいが、「3」なので、『ヒックとドラゴン』が有利。
●美術賞→『アリス・イン・ワンダーランド』
『英国王のスピーチ』や『トゥルー・グリット』のArt Directionは、自然である。『アリス・イン・ワンダーランド』は、Art Directionにかなりのウエイトがかかっている。『インセプション』も同様。が、にぎやかさを取って今回は、『アリス・イン・ワンダーランド』。
●撮影賞→『トゥルー・グリット』(ロジャー・ディーキンス)
『ソーシャル・ネットワーク』の撮影が特にいいとは思えない。『英国王のスピーチ』は堅実。『ブラック・スワン』はこの手の賞の範疇からするとやや「実験的」。『インセプション』の金のかかった新しさは、有力だが、撮影の古典的技法をおさえながら、見事な映像を構築した『トゥルー・グリット』のロジャー・ディーキンスに歩がある。でも大家すぎるか?
●監督賞→デヴィッド・O・ラッセル(『ザ・ファイター』)
『トゥルー・グリット』のコーエン兄弟は、旧バージョン(『勇気ある追跡』)をしっかりとおさえながらバージョンアップしはしたが、下敷きがあるので、パス。デヴィッド・フィンチャーは、彼の実力としては後退とわたしは思うので、取らない。そうすると、ダーレン・アロノフスキーかデヴィッド・O・ラッセルかということになるが、正攻法で撮った『ザ・ファイター』を取る。
●編集賞→『127 Hours』(Jon Harris)
「Film Editing」というなら、候補に入っている『ブラック・スワン』、『ザ・ファイター』、『英国王のスピーチ』、『ソーシャル・ネットワーク』とくらべて『127 Hours』の映像は評価の基準を変えなければならないだろう。こちらは、きわめて「実験的」であり、単なる目新しさにとどまらず、3D時代に「3D」対「2D」といった月並みな区別を一歩越えている新しさがある。いずれにしても、これが「Film Editing」の候補に入ったのなら、断然これを取りたい。
●メイクアップ賞→『Barney's Version』
『ウルフマン』の狼変身は「古典的」すぎるように見える。『The Way Back』は、時代の雰囲気を出す技術とエイジング(身体と物両方で)が非常に「自然」で技術の高さを感じさせるが、「自然」すぎるためか、「メイクアップ賞」に特筆できるのかどうかがわからない。『Barney's Version』は見ていないので、消去法でこれを選ぶ。
●視覚効果賞→『インセプション』
『アイアンマン2』が候補に挙がっているが、論外である。ヴィジュアル・エフェクツという点では前作『アイアンマン』のほうがよかった。『ハリー・ポッターと死の秘宝 PART1』ならば、『ヒアアフター』のほうがいい。とすれば、『インセプション』しかない。候補作がまちがっている。
●脚色賞→『Winter's Bone』
アダプテーションという点では、『トゥルー・グリット』には旧バージョンがあり、そこから特別傑出した脚色がなされているとは思えない。『ソーシャル・ネットワーク』も、事実があり、特別のところはない。『トイ・ストーリー3』はかなりいいと思うが、『Winter's Bone』とどちらかといわれれば、『Winter's Bone』の奥行きと社会性を取る。
●オリジナル脚本賞→『英国王のスピーチ』(デイヴィッド・サイドラー)
よく書けているという点では、『ザ・ファイター』と『キッズ・オールライト』は双璧である。が、着想の面白さという点では、『英国王のスピーチ』に一日の長。『Another Year』は見ていないので、見当がつかない。こちらになるかもしれない。
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