ファウスト (アレクサンドル・ソクーロフ)(Faust/2011/Aleksandr Sokurov)
◆えらくつまらなかった。出身はいろいろだが、ドイツで仕事をしている俳優たちのせいか、ドイツ以上にドイツ的な「ファウスト」である。クソ真面
目さ、重々しさ、深刻さ・・・。しかし、「ファウスト」には濃厚なアイロニーが乏しい。それは、「メフィストフェレス」を高利貸/マウリツィウ
ス・ミュラー(アントン・アダシンスキー)にしたためかもしれないが、それだけではない。
◆
冒頭に男性器のアップ(解剖中の遺体)があるが、日本版ではここがボカされている。最初のシーンから丸いボカシの輪が出てくるので、うんざりしてしまう。
「関税定率法」のために修正を余儀なくされたという説明が最初に出てくるが、日本では映画をちゃんと上映できる環境がいまだに出来てい
ないのである。関税定率法は、明治43年に出来た法律で、改訂されたとはいえ、いまだにそんなものが有効であること自体がおかしい。
◆関税定率法(旧法)21条1項4号の「風俗を害すべき書籍、図画」
◆これにひっかかった「メイプルソープ事件」というのがあり、最高裁判決で国側が敗訴した。だから、以後、問題解決とおもっていたら、そうではなかった。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A1%E3%82%A4%E3%83%97%E3%83%AB%E3%82%BD%E3%83%BC%E3%83%97%E4%BA%8B%E4%BB%B6
◆ワーグナー(ゲオルク・フリードリッヒ)が、原作ではファウストのカバン持ち/幇間的な役回りなのに対して、もっと才能があり、「ファウスト博
士
は本当は俺なんだ」と思いこむパラノイアックな男にしているのは面白い。実際に「先生」と「弟子」との関係はそういうこともよくある。だから、弟
子のアイデアを師が「盗んだ」として争いが起きたりもする。この映画では、ワーグナーが、ホムンクルスを作ったということになっている。フラスコ
に入った人造人間「ホムンクルス」が、地面に落とされたフラスコが割れて飛び出し、血だらけになって泣くシーンがある。
◆アスペクト比がやけに小さいような気がしたが、公式的にはそれでいいらしい。
Aspect
ratio: 1.37
: 1 (35 mm version); 1.85
: 1 (Final Scene)
◆ソクーロフはプーチンの友人
◆
iMDb: http://www.imdb.com/title/tt1437357/combined
(2012-02-25、シネマート六本木、試写)